第一回琉球ヴィルトゥオーゾ演奏会　エッセイ

「目の前にいるのは天使」

子育ては、大きな喜びですが、多大な労力を使うので、親の心身のストレスの管理が大切です。

四十五歳女性。中学三年生の娘が反抗期でイライラして眠れず受診。「娘は学校から帰ってきても、家事の手伝いもせず、無視して寝ている。それを見ると腹が立ちケンカになる」。　娘の一日の過ごし方を聞くと、部活の県大会が近いため早朝も夕方も練習で帰宅は遅いという事である。「部活で疲れて何も出来ないじゃないの？よく頑張っているねとほめてみたらどう。また、子供を注意する時は、『あなたはダメ子』とか、決して『人格』を傷つける言い方はしないように。

あなたはいい子だけれども、この行動は良くないから直しなさいと『行動』を注意する事。　そして一回注意したら必ず『三回はほめる』事が大切。　そうすると皆よい子に育ちます。　そのためには親は忍耐を強いられますが、それにより親も子供によって成長させられるのです。と私は話した。

二回目の受診「冷静になると、今は自分が耐えるのが一番良いと思いイライラを抑えたら眠れるようになった。　イライラが減った分疲れも少なくなった。　自分が娘を応援したら、娘が自分と会話するようになった。　今までは娘の悪い所ばかり見ていたが、これからは、娘の良い所を見る努力をして行きたい。」と話した。

親は子供が、自分の思ったとおりでないと怒ります。その怒りで親はエネルギーを消耗し疲れ、また、怒りにさらされた子供のストレスも大変です。長い目で見ると決して良い親子関係は出来ません。あるがままのその子を認めてあげて下さい。百点でなくても、その子のマイベストを認めてあげて下さい。

大切な事は、親子仲良く目標に向かって努力出来る関係作りです。　その関係は一生続くのですから。また、「あなたはかけがえのない大切な存在なのよ」というメッセージを子供に送り続けることで、子供の何よりの力になります。

子供に怒りが湧いた時は、子どもが生まれた日の幸せを思い出して下さい。生まれて来てくれた事だけで有難い。こうして育てさせてもらっている事だけで有難い。

今子供が目の前にいる事は当たり前の事ではなく奇跡なのですから。　目の前にいるのは天使なのですから。

一銀クリニック医院長

城間功旬

第二回琉球ヴィルトゥオーゾ定期公演（対談）

心療内科専門医　城間功旬

琉球ヴィルトゥオーゾ　與那嶺理香

Q（與那嶺)

怒った時の子供への注意の仕方、また親の怒った時の対処方法を二三ご指導いただきたいのですが。

A（城間）

わかりました。まず、子供への注意の仕方ですが、「あなたはダメな子」とか、決して人格を傷つける言い方は決してしない事です。「あなたはいい子だけども、この行動は良くないから、この行動は直しなさい」と行動を注意するのです。そうすれば子供は傷つきませんし、正しい行動が学習できます。

そして、一回注意したら必ず三回ほめましょう。そうすると子供は、「自分は親から認められているんだ」と自分を肯定することが出来、皆良い子に育ちます。

（與那嶺）

ほめると言う事は大変大事な事なのですね。

（城間）

自分自身に置き換えてみると解りますが、怒られっぱなしでは、怒られる方は大変ではありませんか。怒られっぱなしだと、親に怒られないために、嘘をついて怒られるのを避けようとする事になりかねません。また、その嘘を親が見破ってはまた怒ったりと、いい事はありません。　また、怒られて育ち大人になり、会社で上司に怒られないようにと絶えず緊張して大量にエネルギーを消耗し、そのため疲れやすい人もたくさんいます。

一回注意したら三回ほめないといけないので大変ですから、小さな事では怒れなくなります。　親は自分の怒りをコントロール」しないといけず、大変な忍耐を強いられますが、それにより親も自分の怒りをコントロール出来るようになり、成長していくのです。

私はこれを自分の子供での失敗体験から学びました。息子が幼稚園の時に、「子供がおどおどしているので家で厳し過ぎるのではないか」と家内が先生から注意をうけました。カトリック系の幼稚園でその先生はシスター上地と呼ばれていました。私たち夫婦は、躾のつもりで、ある程度厳しく育てた方が良いと考えて、話あってルールを決め、よかれと思い時にはお尻を叩いたりもしていました。大切な息子がこんな風に育っているとは思いもしませんでした。大変ショックでした。間違っていた自分たちの教育の仕方を根本から見直さないといけませんでした。それから、育て方を会話したようにすっかりかえました。

今でもシスター上地先生には感謝でいっぱいです。先生が幼稚園を那覇から移られた時は与那原まで御礼にいきました。

なぜ自分達がこんな間違った育て方をしてしまったのか考えてみました。実は全く根拠のないまま、検閲しないまま、ただ自分の親がしていた事をそのまま自分の子供にしていただけだったのです。　驚きでした。これを「世代間連鎖」といいます。

わたしの親もその祖父母も祖先から代々、自分で検閲する事なく、世代間で受け継いできたもので、私の親、祖祖父にも罪はありませんでした。しかし、自分達の代で止める事が出来良かったとつくづくおもいます。

（與那嶺）

親のイライラの対処方法はどうしたらいいですか。

（城間）

正しい子育てを認識して、そのように育てる決心をする事です。子供のためなら、その気になれば必ずできます。また、怒りが湧いた時には、腹式呼吸をして、数を百まで数えましょう。それでもだめなら、席を外すことです。

実際に腹式呼吸の指導

（與那嶺）

先生のエッセイのタイトルで「目の前にいるのは天使」でした。

先生、「天使は子供達」なのですね。

（城間）

はい、そのとおりです。子供の顔をみて、つぶらな瞳で笑っているだけで親を幸せにする天使です。言葉からはダイヤモンドがこぼれ落ちるようです。そしてなによりも、自分の事を計算しないで純粋に相手の事を思いやる事ができます。

また、私の失敗談ですが、息子が小学４年生の時、少年野球の低学年チームに属していました。チームの高学年が不祥事を越こして大会への出場が取りやめになったとき、私が息子に「不祥事をお越したのが高学年なのだから、低学年は出場させたらよいのに」と軽い気持ちで言ったとたん、息子から「お父さん、何言っているの、六年生は最後の大会なのに出られないんだよ。その気持ちが解らないの。　僕らが出れる訳ないじゃないか」と　たしなめられました。一本背負いで、息子に取って投げられた気がして、自分の事しか考えきれない自分を恥ずかしく思い、ぞっとしました。

本当に子供は純粋に物を見る目を持っています。だから、子供達は天使なのです。

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